case35-2018
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcpc1616400
Case35
68-year-old woman with back pain and a remote history of breast cancer
C.C.
背部痛、仙骨痛
現病歴:
25年前に、左乳房の浸潤性乳管癌・浸潤性葉間癌、腋窩リンパ節を切除。2つの腫瘍はER陽性、腋窩リンパ節の2/10に転移認めた。アジュバントとして、シクロホスファミド、ドキソルビシン、MTX、フルオロウラシルも薬物治療、放射線放射を実施した。12年前、右乳房にER陽性BRCA陰性の悪性腫瘍を認め切除。アロマターゼ阻害薬のアナストロゾールを使用し、放射線放射を実施した。9年前、3週間の労作性の呼吸困難が発生し肺塞栓症と診断、Lupus anticoagulant陽性でcardiolipin IgGとIgM陰性。低分子量ヘパリンとワルファリンを投与。このとき、22.7 kg体重減少。アナストロゾールは中止。18か月のアナストロゾールの中止から再度両側肺血管に肺塞栓症が生じた。ワルファリンの投与。8か月前、胸膜痛と腋窩痛を訴え、再発性のPEが疑われた。このときの胸部CT所見で、左腋窩リンパ節の腫脹を認めた。ワルファリンによる出血の可能性から、エコーガイド下の生検はできなかった。2か月前、胸部CTでは胸椎・肋骨・胸骨に溶骨性の芽球性の混合病変が多数あり、胸骨には圧迫変形が認められた。脾臓に直径12cmの多数の高信号病変を認めた。99mテクネシウムより、骨シンチを実施。頭蓋骨・胸腰椎・椎体・肋骨・橈骨にテクネシウムの蓄積を認めた。
生活歴:
職業は地方の病院のヘルスケア、喫煙歴は20*15で15年禁煙、既婚者で成人の娘がいる。家族歴は、母は70歳で、姉は57歳で、おばさんは65歳で乳がんを発症。父は前立腺癌、脳梗塞。
既往歴:
右乳房の葉状腺腫、肥満、SAS、高脂血症、高血圧、osteoporosis、胞状奇胎
入院時現症:
BT 36.6℃、HR 66, BP 120/80, SpO2 7, BMI 40.9, 背部痛、仙骨痛を認め、特に左側が痛い。痛みの性状は鋭く、刺すような、灼熱感があり、座ると増悪する。NSAIDsで鎮痛させていた。痺れ、便異常、虚脱は認めず。リンパ節の腫大は認めず、手術痕はキレイ。T10辺りの椎骨の痛み。
主な主要検査所見:
血小板 167 / mm3(抗凝固薬のワーファリンによると考えられる)、他のデータは異常なし
プロブレムリスト
#1.転移性乳がん
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経過と考察
#1.25年前の乳がん切除について、以前は腋窩リンパ節の全切除が主流だったが、現在はセンチネルリンパ節のみの切除になっている。後者はリンパ管性浮腫などの合併症が前者に比べ少ないが、両者の生存率は変わらない。HER2(human epidermal growth factor 2)陰性でtrastuzumabの使用はできなかった。治療は化学療法をした後に放射線治療となった。この順番では、遠隔転移の発生率が下がるため。腫瘍細胞が長期間の休眠から目覚めることは、ER陽性乳がんに多くおよそ50%が5年以上の経過で認められる。少なくとも再発のリスクは15-20年持続すると言われている。腫瘍細胞の目覚めというものは、微小環境の変化が根底にあるとされる。アジュバンドのホルモン療法の期間は長期間実施されることが望ましいと考えられているが、生存率の点では変わらないとされている。長期使用は、再発リスクの低下が緩やか・アドヒアランスが悪い・副作用が生じたなどで中止される。25年前の乳がんの遠隔転移かどうかを調べるため、仙骨の骨生検を実施。顕微鏡で、中型の単一細胞の腫瘍が認められ、免疫染色ではサイトケラチン・マンマグロビン・ER・PRが陽性、E-カドヘリン・HER2は陰性。以上から25年前の乳がん転移とされる。ER陽性の転移性乳がんの治療はCKD4/6阻害薬(palbociclib, ribociclib )を使用する。CKD4/6阻害薬は、細胞周期のG1期からS期への移行をブロックする作用があり、ホルモン療法の併用で、無増悪生存期間が延長される。本症例では、palbociclibとアロマターゼ阻害薬のletrozoleを使用した。Palbociclibは空吐き、悪心などの副作用から投与開始1か月後に中止され、letrozoleのみが続けられた。しかし、1年後に新しい場所で骨転移が見つかりletrozoleが中止。セカンドラインの治療として、ER完全ブロッカーのfulvestrant, アロマターゼ阻害薬のexemestane, mTOR阻害薬のeverolimusが開始された。また、腫瘍の変異に応じた治験に参加した。遺伝子配列分析のために、血中に循環している腫瘍細胞のDNA(ctDNA)を調べるliquid biopsyを実施。ESR1の異なる2つの変異が見つかった。この変異がアロマターゼ阻害薬の耐性を示唆していると考えられる。Letrozoleの使用でアロマターゼ阻害薬の耐性が生じたのではないかと考えられた。この耐性機構ではエストロゲン非依存性に腫瘍は増殖できるが、部分的にエストロゲン依存の場合がある。これに対し、選択制エストロゲン受容体分解剤(SERD:selective ER degraders)はERをダウンレギュレーションする作用があり変異ESR1にも効く。ESRDを治験投与するも数か月後に肝臓へ転移していた。多くの検査結果から、lobular carcinomaと判断された。興味深いことに、ctDNAで発見された遺伝子変異と転移巣での変異は異なることだった。このため、異なる変異がいくつか生じているのではないかと考えられた。腫瘍細胞に選択的に作用するフルオロウラシルのcapecitabineが投与。患者はいたって良好だった。患者の家族歴では乳がんに強いつながりがあるように考えられる。DNA修復機構の問題なのだろうか。BRCA陰性から、他の因子が作用していると考えられる。
学習したこと
- アナストロゾール阻害薬の副作用に血栓形成
- 乳がんの抗がん薬について、転移した乳がん
- ESRD。ESRMは知ってたのですがこんな薬剤もあるとは。まだ治験段階なのかな。。。
- CKD4/6阻害薬。日本では2017年に承認
- liquid biopsyなるもの。血中に腫瘍細胞が含まれるから、手術で生じる血液は再度体内に戻すことは禁忌だと知っていたのですが、治験段階では腫瘍の因子について何かしらclueをつかめるようになっているとは。。。おどろきでした。名称はctDNAだそうです
- 自分が訳すより、Google teacherにぶち込んだ方が速いのではないか疑惑wwwwウィキペディアを全文放り込むとすごい丁寧に翻訳してくれる。
以上
ですかね。これ作るの5時間くらいかかるから嫌。1日が潰れる
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