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case 40-2018

 

case 40-2018

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcpc1810388

47歳女性

CC:再発する(繰り返す)副鼻腔炎、咳嗽、気管支拡張症

現病歴:

  • 20歳代ごろ、1年に2~3回の副鼻腔炎疾患を罹患してた。その都度、抗菌薬で治療していた。
  • 30歳代で、アレルギーの誘発が原因ではないかとされ、アレルゲン検索の実施。皮膚パッチ検査で、塵埃・草・ネコのアレルギーなどの環境アレルギー。血液検査で、牛乳・小麦・酵母グルテンライ麦・卵白のアレルギーを認めた。食事からアレルゲンを除去することで、その後5年ほどは副鼻腔疾患にかからず。しかし、その後、鼻閉・副鼻腔感染症を発症した。
  • 42歳、持続性の咳嗽の出現で、細菌性肺炎とされ抗菌薬の投与。さらに鼻甲介切除を施行。
  • 入院6か月前、黄褐色の痰が出現し、量が増加、色調は緑色に変化。
  • 2か月前、かかりつけ医に来院。CXRにて上・中肺野の気管支拡張症、喀痰培養ではEnterobacter cloacae, Serratia marcescent, Mycobacterium abscessusを認めた。血算・腎・肝機能・血中IgE・αアンチトリプシンⅢ 正常、ANCA 陰性、アレルギー試験 陰性、肺機能検査で、FEV1の減少、肺活量 正常、残気量 正常、DLCO 正常。フルチカゾン、プロピオサルメテロールの吸引、レボフロキサシン服薬で咳嗽が一時落ち着く。入院までの4週間に渡りレボフロキサシンを再発する咳嗽、痰に投与。このとき、軽度の労作性呼吸困難、疲労感、鼻閉、頭痛を呈していた。

既往歴

  • 喘息、心不全、喀血、発熱、悪寒、寝汗、体重減少、筋肉痛、紅斑、消化器症状、結核感染の既往(ー)、sick contact 無し。
  • 偏頭痛、幼少期に扁桃腺切除術
  • 3年前に子宮ポリープ切除
  • 5年前に両目のレーシック手術
  • 8年前に良性の乳がん腫瘤の切除
  • 薬剤アレルギーは無し

服薬歴

フルチカゾン、サルメテロール、フェニレフリン

 社会生活歴

入院時現症

  • 元気そう
  • バイタル:RR 14, SpO2 99 %、身長 165cm、体重 64kg、BMI 23.5
  • 身体所見:副鼻腔の圧痛なし、右肺尖部にラ音、他は正常
  • 検査所見:CXRは、tram trackを両肺上葉と左肺下葉に認め、気管支拡張症の所見であった。浸潤影、浮腫、胸膜浸潤、リンパ節腫大、胸部造影CTでは、気管支拡張像と粘液栓を認めた。喀痰培養にて、抗酸菌、多形白血球、グラム陽性細菌を認めた。

 

鑑別

気管支拡張症ときたら、

カルタゲナー症候群、嚢胞性線維症ではないかなと。

これはUSMLE STEP1にて頻繁にCFが出題するので一度first aidを読んで知ってました。

 

NEJM的鑑別

抗酸菌培養から非結核菌を検出、これは根底にある疾患の結果で発生したと考えられる。百日咳を疑うが、ワクチン接種をしているはずなのでこれも除外。

  • 免疫不全:

X連鎖無ガンマグロブリン血症などの原発性免疫不全症を挙げていた。しかし、血中IgGは基準値内であり、否定。

  • アレルギー疾患:

以前にアレルギー物質を食事から除いても症状が再発したため、除外

嚢胞性線維症原発性線毛不全症(カルタゲーナー症候群)を挙げていた

 

CFとは

CFはARで、CFTR遺伝子異常が原因である。CFTR遺伝子はCl輸送体蛋白を発現し、粘液の濃度を調整している。CFでは、輸送体異常により、粘液の粘度が高くなる。このことで、気道が粘液により閉塞し、空気の循環が無くなり感染症を起こしやすくなる。CFの検査は鼻粘膜のCl濃度の計測か、遺伝子検査を実施する。

原発性線毛機能不全症とは、

線毛が機能しなくなる疾患。その名前のとおりですが。。。線毛を形成する微小管のダイニンなどの障害が原因。遺伝形式はAR、症状は繰り返される感染(中耳炎、副鼻腔炎、肺炎)、不妊。本症例では、子供がいないそうであるが、これも原発性線毛機能不全症を考えるのに有効である。しかし、疾患の優位性を上げるものでもない。また内蔵逆位、右胸心などを認める場合がある。

 

この2つの鑑別がもっともらしいので、遺伝子検査を実施した。

 

検査結果

から、嚢胞性線維症と診断。

 CFの疫学

嚢胞性線維症は欧米発症件数が多く、アジアでは少ない。大半の変異部位が、Phe508delであり、本症例も同じと判明。米国には29,000の患者がいて、新規発症者が年間1000人。治療は主に、機械的、薬物的治療、膵酵素の補充、栄養補充、tobramycin吸引といった抗菌薬治療、早期のCF増悪予防である。こういった治療により、およその生存期間は41.7年となっている。

 

入院後の経過

本症例では肺機能が軽度減少しており、これはM. abscessus感染によるものと診断し、抗菌薬治療を開始し軽快した。その後再度M. abscessus感染となり同じ治療で患者は改善した。

 

ここからが大きなポイント!!!

CFの特効薬があること。

まずCl輸送体のお話です。

CFの病態

正常では、CFTR遺伝子から発現したタンパクは細胞内で適切に処理され細胞膜表面に位置して輸送体として機能します。しかし、CFTR遺伝子の508番フェニルアラニン欠損では、発現タンパクが細胞内でうまく加工されず、輸送体として細胞膜表面に出てこない。これを薬物でコントロールしたものが、lumacaftor, lvacaftorです。前者は、タンパク機能の閾値を下げる作用があり、後者はタンパクが細胞膜表面に到達できるように補助する作用がある。

 

この2つの薬物は、肺機能改善、長期予後の改善、繰り返す呼吸器疾患の減少を導きました!!!

日本では未承認。米国では2012年からオーファン事業として認可されている。

www.medicalonline.jp

dresources.jp

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1409547

 

すごいですね~。

 入院後経過2

本症例では、ivacaftorを使用し、肺機能改善、労作時呼吸困難の軽減、痰の量の減少が認められた。その後2017年から2年の経過観察で入院することもなくなった。

 

まとめ 学習できたこと

嚢胞性線維症の治療法に生化学的な機序の薬物療法があった。

 

 

 

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